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【大学と社会を繋ぐ架け橋へ】研究者として東大に戻った私の今後の目標とは~山口真由さんインタビューvol.3~

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2022/05/12

【大学と社会を繋ぐ架け橋へ】研究者として東大に戻った私の今後の目標とは~山口真由さんインタビューvol.3~

# 文科Ⅰ類

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今回は山口真由さんのインタビューvol.3をお届けします。vol.3では、弁護士をご経験された後、東京大学へと研究者として戻られた山口さんの今後の目標等についてお聞きしました。

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──現在、メディアで活動されることが多いですが、その理由は何でしょうか?

山口さん

家族法の研究者として論文を書いて、出版しているのですが、どうしても学術的な論文だと読む人が限られているんですね。論文としてジェンダー平等の話を書いても、それが届くのって、むしろ、社会階層の上の方にいる人たちだけなのかなって。私は、もっといろんな人にメッセージを発信していきたいなと思っていました。その足掛かりとしてメディアを使えればと考えています。今は自分が話したいことを話せているわけではないですが、メディア出演と研究とを両立しながら、専門性を身に着けていきたいです。次のステップとしては、自分が話したいことを発信できるようなコミュニティを築きたいと考えています。

──大学と社会をつなぐ架け橋のような存在を目指されているのでしょうか?

山口さん

そうですね。アカデミックの先生は偉大な人ほど、外に向けて発信することに対しては慎重なんです。他の分野に対する謙抑性というのは重要な資質。逆に言えば、私みたいな、ある種部外者にこそできることがあるんじゃないかなと思っています。

──官僚、弁護士を経て、現在は研究をしつつ、メディアにも出演されていますが、特に大変だった仕事はありますか?

山口さん

研究は結構つらいと思うことが多いですね。自分が考えたものを書き続けないといけない。東大生って往々にして、頭で構想するものと自分の手が生み出すものとのギャップに苦しむことが多いと思います。知識や構想はあるが、実際に自分が仕事をし始めると自分のイメージ通りにならず、思った以上に稚拙で、このギャップがとても苦しいと思います。

博士課程の頃は、東大の図書館で勉強していたときに、締め切りまでに時間が迫っていて、勉強しなきゃいけないことがまだたくさんあって、自分のキャパシティを明らかに超えていると思ったら、どうしようもない無力感に駆られて泣いたことがありました。それでも1日5ページと決めて書いていました。私は、5ページ書くと決めたらどんなにくだらない内容でも5ページ書けるんですよね。それも一つの能力だと研究者の先輩に言われたとき、最初はバカにされているのかなと感じました。でも、多くの優秀な人たちが構想と現実のギャップに絶望して成果を提出できなくなる中で、過程を結果に結びつけられるのも一つの能力だなと思いました。司法試験も、ただ勉強するだけでなく、受かるところまでやれる。結果につながった時はただ楽しいだけでは味わえない達成感があるので、苦労して自分の力で一歩ずつ達成していくというのが今の喜びになっています。

──東大卒、という学歴を得ることに不安を感じる女性も多いと思うのですが、東大を卒業して良かったこと、苦労したことはありますか?

山口さん

私は29歳までには結婚したいと思っていました。ただ、パーティとかで年齢を聞かれて、29ですって答えると、ババアじゃんとか言われて。そのときにハッとしました。その場所で、私の学歴とか、そういうのを含めた人間性とかが全く尊重されないんですよね。むしろマイナスになっている。どうして私は、彼らの差し出した物差しの中に、一生懸命に自分を押し込めようとしてたんだろうって。私、私を「ババア」っていう子の目の前の人に評価されたいと思わない。彼は私を尊重せず、私も彼を尊敬していない。

それでふと、どうして私は選ばれる側にまわろうと躍起になっていたんだろうって。選ばれる側にまわって、彼らの引いた物差しの中で、例えば美醜を競わされ、例えば料理ができるかどうかで判断される。私にとって料理ってちぎるかゆでるかの二択。うちには包丁もまな板もなかったから(笑)。どうして私は選ばれる側のフレームワークに自分を押し込んでいるんだろうな、と思って。私は今の人生を自分で選んだんだ、と思ってからすごく楽になりました。

結婚したくないとか強い決意があるわけではないんですけど、結婚しなくても私は満ち足りた人生を歩んでいて、自分の収入があって、自分の余暇を自分で決められる。それは私にとってはすごく幸せなことだな、と。選ばれる側に自分を押し込んでいくと苦しいですけど、自分の人生を主体的に選ぶ側にまわったんだという覚悟を持てば、東大に入ったことは圧倒的に人生の選択肢を増やしてくれる。収入がある、自立した仕事を与えてくれたので、そこはとてもよかったと思います。

──財務省、弁護士事務所と「合わない」場所に当たってしまった後、次の道を進むのにはとてもエネルギーがいると思うのですが、エネルギーの源は何なのでしょうか?

山口さん

当時は私も相当落ち込んでいました。弁護士事務所の時は、自分の能力が足りていないのが問題だと思ってとても落ち込みました。でも今思うと、あれは合う合わないの問題だったな、と感じます。私が悪いわけでも、組織が悪いわけでもないと思いました。それと、成功するか失敗するかは運だけど、挑戦するかどうかは自分の意思の問題なんですね。失敗したのは挑戦したから、よくやったと、自分を慰めるようにしています。

そう考えるようになったのは留学の影響も大きいです。アメリカの人は自分が挑んだことを褒め称えます。あと、アメリカの人は仕事が無くなることを気にしないんですね。アメリカの友人は何人も失業していますが、みんな明るいです。そういうメンタリティを見た時に、何とかなるかなと思いました。

うまくいかないときは、誰が悪いのでもなく単に相性が悪かったというだけで、それは早い時期に解消しておく方がお互いにとってハッピーです。次の挑戦に対するエネルギーを失うまでやらないことが大事だと思います。

──今後の目標をお教えください。

山口さん

私はもともと家族に対するこだわりが強かったんですよ。弁護士時代のM&Aは他人事でした。高く売って、安く買うこと。そうやって日本の、そして世界の経済を支える仕事を、私は尊敬します。でも、私にとっては、自分の時間を削って、一生を賭けてっていう何かではなかったのかな。そこに神は見いだせなかった。家族というテーマは私にとって根本にかかわるこだわりです。自分は家族にとても感謝していますが、自分は次代にそれと同じものを残せていない。それが自分にとって負い目になっています。だから家族とは何か、親子とは何かを自分なりに突き詰めたいと考えています。家族法の研究をして、成果を多くの人に伝えられるような立場になりたいというのが今の目標です。

──最後に東大生へのメッセージをお願いします。

山口さん

私もそういうタイプなのですが、失敗したことがないと、過度に失敗を恐れすぎることになります。失敗することを恐れるあまり、合わない環境でも無理して自分が合わせようとして、それが精神的な変調に繋がっている人を見ると、胸が痛くなります。一回失敗してみると大したことないな、と思うんですよね。失敗は挑戦の裏返しだと思ってるので、自分に合う場所が見つかるまで扉をたたき続けるのが大事です。東大生は他の人よりずっと多くの扉が用意されているので、1個しか空けないのはもったいない。一つ明けてダメだったら次、と扉をどんどん開け続ける人生もそれはそれでいいと思います。