車好きな学生が自動運転に挑戦。「今できること」に執着はもったいない|長期インターン体験談 - ATLAS(アトラス)〜未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト〜

今回は、東京大学理科Ⅰ類から工学部機械工学科に進学され、現在学部4年に在籍しながら完全自動運転の実現を目指す会社、TURING株式会社にてエンジニアとしてインターンをしている井上慶昭さんのインタビューをお届けします。

――井上さんは理科Ⅰ類で入学されています。その理由は何だったのでしょうか?

井上:現役の受験の時は理科Ⅱ類を志望していました。それはもう単純に入りやすさ、最低点的に理科Ⅱ類を選んでいました。ただ、浪人して自分が何をしたいかということを考えたんです。自分はものづくりをしたいと思っていたので、工学部に進学したい。そうなると進振りで工学部に行きやすいのは理科Ⅰ類ということで理科Ⅰ類に変更しました。浪人を経て受験の点数的にも余裕が出てきたこともあります。

ーーそのあと進振りでは機械工学科に進学されていますが、これは最初から決めていたのでしょうか?

井上:機械に行こうと思ったのは実は進振りになってからです。その前、1年生の冬くらいでは計数工学科を志望していました。元々コンピュータやプログラミングが好きで、調べたりスクールに入って勉強していたので計数ではそういった勉強ができそうだと思っていたんです。それに加えて、神経科学やBMIといった自分の興味のあった分野をやっている先生がいて、そこに興味を持って志望していました。神経科学やBMIといった分野は幼少期から興味があったんです。人の移動という極めてアナログだが人間社会に不可欠な要素に興味があり、それを大きく変えうる考えとして、テレイグジスタンスという概念があります。移動することなく遠隔地で活動できる、どうやってそのような技術を作るのか、という入口で神経科学やBMIに興味をもっていました。大学1年生の頃には、頑張って貯めたバイト代でカンデル神経科学という15,000円もする1,700ページの神経科学の名著を買って読んでいたくらいです。
それで志望していたんですけど、やっぱり計数って進振りに必要な点数が高くて難しいじゃないですか。進振りの第一段階は計数に出したんですけど通らず、そこで改めて学科について考え直しました。計数を志望していた理由って自分が今できること、できそうなことを軸に考えていました。プログラミングや神経、BMIの話ですね。考え直すにあたって、自分がやりたいことについても目を向けてみたんです。すると、ものづくり、特に車が好きだったので機械系にも目を向け始めた結果、機械工学科を選択しました。

ーープログラミングのスクールに入っていたということですが、どんなところだったのでしょう?

井上:42 Tokyo というスクールです。完全無料のスクールなんですけど、入るには4週間のPiscineという試験があって、そのPiscineで基準をクリアした人だけが通うことができるんです。僕は同じクラスの友達と2人で1年生の2月に参加しまして、その友達がすごくプログラミングできる友達だったので協力してやっていました。その友達は期間中膨大に出る課題を全部終わらせたりしていて(笑)僕はコンピュータ内部のメモリ操作とか触ったこともなかったんですけど、その友達に追いついてやろうと思って必死に色々調べながらやっていました。そうやって毎日10時間とか12時間とかコード書いたりして必死にやっていたら合格しました。

42ではプログラミングの基礎やコードレビュー、チーム開発の手法といったことを学びましたね。RUSHという3人チームでの開発課題があるのですが、そういうところで他の人と共同で開発したりとかお互いコードを読みあったり、なぜ自分がそのコードを書いたのかということを人に説明したりする中で、「集団の中で開発をする力、経験」というものは大きく学んで、今もインターンなどで活きていることだと思います。僕は途中で進路との乖離から42の課題を解くのをやめてしまったので3年生の秋に終了してしまったんですけど、そうした経験を積むことができました。
(※42Tokyoでは、課題を期限内に提出することができないと退学となってしまう、Black holeという制度がある。)

ーー他に教養学部時代は何をされていたのでしょうか?

井上:サークルでいうと、海洋調査探検部というスキューバダイビングとキャンプをするサークルに入っていました。大きい活動としては夏休みや春休みに沖縄とかの離島に行って、そこでキャンプをしながらスキューバをしています。
あと大きなことでいうと、1年生の夏休みにイギリスに留学しました。英語を身につけられるときにやった方がいいかなというのと、単純に時間があったので留学したんです。午前は昼過ぎまでイギリスの語学学校で英語を勉強して、午後は学校の人と街に出たり博物館行ったりしていました。

ーー留学を通して何か変わったことはありましたか?

井上:なんかあんまり色々なことに躊躇いがなくなりましたね。出来なさそうだからやめとこうみたいな発想ではなくて、とりあえずやってみよう、できなかったらできなかった理由は何なのか、それがはっきりしたらそれをクリアしたらいいんじゃないかみたいなそういう考え方になりましたね。
元々僕は英語ができる人ではなかったので、イギリスに行ったばかりの時はまず相手の言っていることが分からないし(笑)だから何のコミュニケーションも取れない状態だったんですけど、徐々に聞き取れるようになってコミュニケーションも拙いながら取れるようになりました。自分の言いたいことが完璧に伝えられるわけではなかったんですけど、コミュニケーションは何とかなるっていう体験が結構あって、そういう日常のことも通して「なんとかなる」という精神になったのだと思います。

TURING株式会社 井上

ーー1年生の頃に将来のキャリアというか、将来設計のようなものは持っていましたか?

井上:本当になんとなくですが、東大を志望し始めた高校生の時からGAFAに代表される外資IT企業には興味がありました。職場の環境もいいし、給料もすごいじゃないですか(笑)なのでそういうところで働けたら楽しいし、色んな意味で成功例だろうなと思って漠然とそういうところに勤めたいという気持ちはありました。ただ、そういうところに勤めるにはやっぱり海外の大学や大学院を出ている方が有利だと聞いて、自分は今英語もそこまでできないし、ということでイギリスに留学したんです。

ーー留学や42など、キャリアを意識して行動されているように見えるのですが、そういう意識はありますか?

井上:キャリアを意識しているというより、全ての元になっているのはやっぱりプログラミングが好き、パソコンをいじるのが好きで、さらにものづくりも好きという気持ちだと思います。留学などについては、プログラミングの仕事でインパクトのあるところ、優秀な人が集まる環境はどこなんだろうと調べた時にGAFAがあって、その時は留学や42という行動に至りました。

ーー機械工学科に進学された段階では自身のキャリアについてどう考えていましたか?

井上:進学時点では海外に留学して外資ITに就職するというキャリアを考えていました。機械工学科には独自の交換留学制度があって、成績次第ではMITとかに行けると聞いていたので、それを使って留学も目指す道もあるかなと当時は考えていました。ただ、このキャリアについては3年生冬の研究室振り分けの前にもう1度考え直したんです。

ーーどう考え直したのでしょう?

井上:3年生の冬の時には、もう結構プログラミングができたんですよね。それでそのスキルを使ってITの会社に入ることができれば良くも悪くも安泰だと思っていたので、ずっとその道を考えていたんですけど本当にそれを仕事として選んで大丈夫なのかと思い直しました。

受験勉強から大学生活、進振りから当時の研究室振り分けの時点まで自分のできることを伸ばしていて、自分が「やりたいこと」よりも「できること」の方に流れているなと感じたんです。もちろんITやプログラミングはやりたいことだったんですけど、もう一つのやりたいこと、「ものづくり」の方に目を向けてみてもいいのかなと思いました。ただ完全にプログラミングを捨てるわけではなく、ものづくりとITを両方組み合わせるようなことをしよう、研究室選択のタイミングだったのでそういう研究はなんだろうとか、もっと広げてそういうことができるようなキャリアはなんだろうと考えました。そうなったときに、僕は車が好きということもあって、自動運転だと思い、今はそういう方面の研究室に入っています。

ーー研究室もTURINGも自動運転を扱っています。研究室とTURINGで領域としては被っているのでしょうか?

井上:自動運転という大きな括りの中では被っていますが、アプローチの方法が違います。自動運転には大きく自律型と協調型というものがあって、自律型はイメージするような自動運転です。車についているセンサーがものを検知して、運転に必要な情報を自分で得るというシステムになっています。一方協調型は車についたセンサーや、街中に固定されたセンサーの情報をネットに送ってそこで情報を処理し、その結果を車に戻して必要な情報を得るというシステムです。研究室の方では協調型を、TURNIGでは自律型の自動運転について扱っています。僕はその2つのアプローチのどちらにも参加しているので、お互いのこれから解決しないといけない課題とかを見比べられるという意味で凄くいい経験になっています。

ーーTURINGでのインターンは井上さんの興味のある領域ドンピシャだと思うのですが、どうやってインターンを探されたのでしょう?

井上:やっぱり車×ITという部分で探していました。探し始めるまではそんなインターンはないんじゃないかなと思っていたのですが、車とIT、自動運転というキーワードで探していたらちょうどタイミング良くTURINGがスタートアップとして上がっている状態だったので応募しました。実際入った後に会社の人から「どうやってこの求人を見つけたの?」と聞かれるくらいには少なかったみたいです(笑)

それと応募要件に関しては、大体自動運転の求人だと経験必須のところが多かったです。自動運転の経験というよりは、車開発の経験か、深いITの経験ですね。そんな中でスタートアップではその経験が無い状態でもチャレンジさせてもらえることが多いと思うので、最初の経験を積む一歩として凄くありがたいなと思います。あと、学生主導のプロジェクトではないという部分も大きいです。技術プロジェクトの場合、学生主導だとどうしても技術力不足がネックになってしまうと思うのですが、TURINGでは学生ではなく、自動運転の世界的名門である米CMU出身の方がCTOを務めていたり、大手IT企業で役員としてAIの技術的統括をされていた方が現在参加していて、さらにカーメーカーの方とも協業させていただいているので技術レベルに関しても凄く高いと思います。

ーーインターンをされているTURING株式会社はどんな会社ですか?

井上:TURINGは、最終的に目指しているのは場所や時間も関係なく完全に自動で運行してくれる、ハンドルがなくても大丈夫なくらいの自動運転ができるシステムの実現と、あとはTURING自体で電気自動車を作ってそれを販売しようということです。ソフトとハードのどちらも扱っていくことを目指しています。自動車の会社はトヨタやホンダ、日産などなど大きな会社が沢山ある中で、今スタートアップとして参入していくのは無理なんじゃないかと思われるかもしれないんですが、”We overtake Tesla”ということを会社のモットーにするくらいみんなが本気で自動運転車の実現を本気で目指しています。

ハードの「車を作る」という面に関しては、今着々と計画を進めている段階です。車を作るというのは本当に色々な技術的なノウハウが必要で、長年車を作っている企業にはそういう研究や開発の蓄積があることが圧倒的な優位性だと思います。

一方でソフトウェアの方は開発の着手ハードルとしては低いので、そっちから開発していこうということで今は売られている既存の車を改造して自動運転車を実現しようとしています。

現在ではTURINGでお借りしているテストコース内の決まった道であれば、人間が触らずに3000円くらいのつけてあるWEBカメラから視覚情報を入れて、ハンドルを切ったりアクセルブレーキを制御したりしてちゃんと走ることができています。ただテストコースの外で実験をするには公道に出るための許可とかが必要なので、安全性を高めてそこの許可を取ることを今年中に目指しています。

TURING株式会社 長期インターン生

ーーTURINIGの自動運転で用いる情報としてはカメラだけなのでしょうか?

井上:今はそうです。他の自動運転では色々なセンサーを使っていると思うんですけど、TURINGの考え方としては人間ってそこまでセンサーを積んで無くて、目で見て運転しているのでカメラでも同じ情報を取れるからいけるだろうという考え方です。

ーーTURINGで井上さんがされている業務について教えてください。

井上:現在実現しようとしている自動運転のプロセスとして、カメラの画像からその状況を把握してそこからどうハンドルを切ればいいのか計算するプロセスと、算出したハンドルを切る角度を実際のハンドルに命令として送信するプロセスがありまして、僕はその後者の方を担当しています。車の中に既に「ハンドルを何度切ってください」という指示を出す電気系統は存在しているので、そこに割って入って信号を入力して動かしています。
ただスタートアップなので、やっていることは毎日変わっています。エアコン操作をボタンからタッチパネルに変更していた次の週には、ハンドル操作をより深くハックし始めるといったスピード感です。記事公開時には、さらに次のステージの開発をしているかもしれません(笑)

ーー技術力という点で、井上さん自身大変だった点はありますか?

井上:今やっている業務ではプログラミングの知識と車特有の知識の両方が必要なのですが、始めるまではプログラミングの知識はあったものの車の知識に関しては全くなかったので、そこが大変でした。今使っている通信もここ数週間で存在を知ったレベルだったので(笑)

TURINGはスタートアップで、付きっきりで教えてもらえるほど余裕のある現場ではないのでわからないながらも自分で調べたり、周りと協力したりして進んでいけるといい環境だと思います。車の中の通信に関してもそうなのですが、自分で調べられるレベルに分解していくことが大事です。車のハンドルを制御して回したいとしても、どうすればいいのかわからないじゃないですか。そうしたら、車のハンドルを回しているのは何なのかや、どうやってその指令を与えているのか、受け取っているのかを調べます。そうすると、ハンドルを回す指令を僕らが出せばいいのかとなって、さらに今度はその指令のプロトコルは何なのか、そのプロトコルに沿った信号を安定して出すにはどういう電子基盤が必要なのか、その電子基盤のパーツはどういうもので、どういった役割を持っているのか…と、ひたすら分解して理解できる事項まで落とし込んでいっています。仕事も、社員の方と相談していく中で必要だよねとなった機能をインターン1人で実装していくことが多いので、そこに対して自分自身で挑んでいっているという感覚です。

ーー井上さん自身のキャリアとして、今後どのようなものを考えていらっしゃいますか?

井上:自分が好きなITと自動車を組み合わせた技術の領域で、どこまで成長していけるかというモチベーションで今動いています。自分がどんどんレベルアップして、どこまでいけるのかということを楽しみに思っていますね。目の前のキャリアで言うと、TURINGを続けながら修士に進む予定です。実は、学部で就職してもいいかなと考えたこともありました。実際に大企業からプログラミングの力を見込んでオファー的なものを頂いてもいたのですが、自動運転という自分の中心に据えたいテーマが見つかった今自分のやりたいことから離れるリスクというものも大きいかなと思いまして、そのオファーをお断りして修士に進みます。

修士の後はTURINGに残る未来ももちろんありますし、他の自動運転の会社に就職する未来もあるかもしれないです。

ーー最後に井上さんから大学1〜2年生に向けてメッセージをお願いいたします。

井上:今できること、今自分に能力があると思っていることに縛られてキャリアを決めてしまうのはちょっともったいないなと思います。少し立ち止まって、本当に自分のやりたいことは何かを考えてみることも大事だと思うんです。やっぱりみなさん今までやりたいことに対して色んなことを乗り越えてこられて、それで今色々なことが出来る人になっていると思うので、やりたいことをキャリアの目標として掲げられるだけの可能性と能力があると思います。それならば、今できることだけに縛られず、本当にやりたいことを軸にしてキャリアを考えていったらいいんじゃないかなと思います。

著者

ATLAS

未来をつくるリーダーへの就活キャリアサイト「ATLAS」の編集チーム。

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