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東大生のためのキャリア戦略論(2) なぜ、「キャリア戦略」が重要になったのか?

東大生のためのキャリア戦略論(2) なぜ、「キャリア戦略」が重要になったのか?

私たちの親世代の中には、今でも「良い大学へ入り、良い企業に就職し、長く勤めることが良い」というキャリア観を持っている人も多いでしょう。

しかし、そのような価値観で現代のキャリアを歩むことは、むしろ危険であるということを知っておく必要があると、UTmap 編集部は考えています。

なぜ、これからの時代には、キャリア全体を自分の手で設計するという視点が必要なのでしょうか。

「キャリア戦略」が重要になった真の理由について、「人材市場の発達」や「終身雇用制度の崩壊」を紐解きながら、キャリア設計のプロフェッショナルである渡辺秀和氏に解説していただきます。


なぜ、「キャリア戦略」が重要になったのか?

渡辺秀和(コンコードエグゼクティブグループ CEO)

一橋大学商学部卒業。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門出身。 2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。1000人を越えるビジネスリーダーに対して、戦略系ファームを はじめとするコンサルティング業界、ファンド、事業会社幹部、起業家などへのキャリアチェンジを支援。第1回「日本ヘッ ドハンター大賞」のコンサルティング部門で初代MVPを受賞。著書『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)など。

発達する人材市場

「人材市場」とは、端的に言えば「転職したい人」と「人材を求める企業」がマッチングされる場です。ポジションや年収、仕事内容、スキル要件や業務経験など、双方の条件が折り合えば、転職が決まります。

その際、まさに株の売買が行われている証券市場と同様に、高いスキルや経験値を持った人材は、多くの企業で争奪が行われ、市場価値が吊り上がり好条件を得ます。プロ野球選手のようだとも言えるでしょう。

しかし、従来はこの人材市場が十分に発達しておらず、新卒で入った大企業に残ること以上にいい転職先が少なかったのです。そのため、「良い大学を卒業し、良い企業に入社して、長く勤めること」が多くの方にとって、適切なキャリア設計となっていました。 

それが、90年代あたりから優良な外資系企業が日本において魅力的な転職先として台頭し、徐々に人材市場の様子が変わってきました。外資系企業が事業の拡大に伴って、優秀な即戦力人材を高待遇で中途採用したため、大手企業から優秀な人材が流出しはじめました。

特に、若い人でも優秀ならば高いポジションで採用するという実力主義の採用が、年功序列の日本企業に辟易としていた優秀な若手の考えにフィットしました。

魅力的な企業の中途採用が増えることで、優秀な人材が人材市場に出るようになり、それを受けて企業はますます中途採用に力を入れる――この連鎖が魅力的な転職の機会を増大させ、人材市場を大きく発展させました。

今では、外資系企業やプロフェッショナルファーム、ベンチャー企業のみならず、日系大企業も即戦力となる優秀な人材を中途採用で獲得しようと尽力しています。

人材市場の発達がキャリア戦略の意義を高めた

どんなに優れたキャリア戦略をつくっても、それを実現し得るいい転職先がなければ無意味です。人材市場が発達して魅力的な選択肢が豊富になった現代だからこそ、キャリア戦略をつくる意義が高まったのです。

このような人材市場の発達を受けて、ビジネスパーソンのキャリア設計のあり方も大きく変化してきました。今後はさらに人材の流動化が進み、人材市場が発達していく中で、キャリア戦略をつくる意義はますます高まっていくでしょう。

(1)主体的にキャリア設計できるようになった

以前であれば、有望な仕事の選択肢が社内に限られていました。社内での異動希望が叶うかどうかは、会社まかせや運まかせとなります。この問題は「配属リスク」とも呼ばれます。自分の意思でコントロールできる要素が少なく、キャリア設計について受け身にならざるを得ませんでした。

しかし、現代では、スキルや実績があれば、自分の好きなことをできる企業へ転職することが可能です。人材市場の発達のおかげで、主体的にキャリア設計できるようになりました。とても大きな変化と言えるでしょう。

(2)若くして高い年収、高いポジションを得られる機会が急増

優秀な人材は企業間で争奪戦となるため、若くても、高い年収条件や高いポジションで転職できる機会が得られるようになりました。

20代で数千万円の年収となる外資系投資銀行、30代前半で2,000万円を超える年収となるコンサルティングファーム、外資系Tech企業やベンチャー企業の幹部ポジションなど、従来の大手企業では考えられないような高額の年収を提示する企業はたくさんあります。

さらに、社長や経営幹部を外部から中途採用した30代の優秀な人材に任せようとする企業もあります。

このように、一般的な企業内には存在しない、若くして高い年収、高いポジションを得られる機会が急増したことも、現代の人材市場の大きな特徴です。

高いポジションに就くためには、年功序列で長い年月を待たなければいけないという時代は過ぎ去りました。

終身雇用制度の崩壊により必要性が増すキャリア戦略

終身雇用制度の崩壊もまた、キャリア戦略の重要性を高める一因になっています。

高度成長期以降、多くの企業が順調に業績を伸ばし、長期間にわたり安定した雇用を従業員へ提供することができました。しかし、昨今の日本を代表するような大手メーカーの大規模なリストラ、外資系企業による日本企業の買収などの例を引き合いに出すまでもなく、大手企業の終身雇用制度は崩壊しつつあります。

さらに、GAFAなどのIT企業との業界を越えた競争が激化していく中で、どの大手企業も安泰とは言えないでしょう。

このような時代において、一つの会社に依存したキャリアは極めてリスクが高いと言わざるを得ません。

もちろん、「必ず転職をしなければいけない」ということでは、全くありません。ただし、企業の大小や業界を問わず、倒産や人員削減のリスクは常に潜んでいるため、若いうちからキャリア戦略をしっかりと描き、いざとなれば転職できるように備えておく必要があるのです。

人材市場で評価されるスキルや実績があれば、たとえ勤務先の会社が潰れたとしても新たなキャリアを歩むことができます。

ひとつの会社をセーフティーネットとする時代から、人材市場をセーフティーネットとする時代になっているのです。

自分のキャリアを自分でデザインする時代へ

このように「人材市場の発達」や「終身雇用制度の崩壊」によって、キャリアのあり方が大きく変わりました。

かつては、転職というと、「上司と馬が合わない」「給料が安い」など現職の不満を解消するために職を変えるネガティブな行為として捉えられていた面があります。

しかし、現代では、自分が求める経験、スキル、収入を得られる環境を自ら主体的・積極的に選択するポジティブな行為として捉えられるようになりました。

もちろん、自分が欲しいスキルや経験を習得するためだけに在職するのは評価されません。所属する企業でしっかりとした価値を生み出し、組織に貢献することが前提です。

このような変化を鑑みると、自分のキャリアを自分でデザインできる「自由」が得られたとも言えますし、自分のキャリアを守るために自分でデザインする「責任」を持たざるを得なくなったとも言えます。

いずれにしても、自分のキャリアを自分でデザインすることの重要性が非常に高い時代を迎えたのは確かでしょう。

好きなことや志を通して、社会をより良くしていきながら、収入もしっかり得ていくという生き方を、自分でデザインできるチャンスにあふれた時代になっていると私は考えています。

東大生の皆さんには、ぜひ、この時代を好機と捉えて、早い段階からご自身のキャリアを考えはじめて頂きたいと思います。


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