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東大生のためのキャリア戦略論(5) ビジネスエリートは戦略的に「ハブ・キャリア」を活用する

東大生のためのキャリア戦略論(5) ビジネスエリートは戦略的に「ハブ・キャリア」を活用する

「新卒で入社する会社によって、その後のキャリアが大きく影響を受けてしまうのではないか?」

「 もし、新卒入社の選択肢を間違えてしまったら、やり直しは効かなくなってしまうのだろうか?」

これは、多くの東大生にとって、切実な悩みだと思います。 

ところが、前職にとらわれず、大きなキャリアチェンジを実現するための方法があるのです。

キャリア戦略のマジックとも言われる「ハブ・キャリア」について、キャリア設計のプロフェッショナルである渡辺秀和氏に解説して頂きました。


ビジネスエリートは戦略的に「ハブ・キャリア」を活用する

渡辺秀和(コンコードエグゼクティブグループ CEO)

一橋大学商学部卒業。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門出身。2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。1000人を越えるビジネスリーダーに対して、戦略系ファームをはじめとするコンサルティング業界、ファンド、事業会社幹部、起業家などへのキャリアチェンジを支援。第1回「日本ヘッドハンター大賞」のコンサルティング部門で初代MVPを受賞。著書『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)など。


キャリアチェンジが抱える“矛盾”とは?

一般的に、ネクストキャリアは、前職までの経験にかなり縛られます。

経理の採用では経理業務の経験者が求められ、人事の採用では人事業務の経験者を求められるというように、通常は該当する業務の経験者が採用されるためです。

そうなると、自分がやりたい仕事にキャリアチェンジするためには、すでにその仕事の経験を持っている必要があるという“矛盾”が生じます。

このような問題があるため、一般的な転職手法のみでは、大きくキャリアを変えることはとても難しいのです。

「ハブ・キャリア」とは何か?

この矛盾を解くために効果的なのが、「ハブ・キャリア」の活用です。

「ハブ・キャリア」とは、幅広い業界・職種から「転入」することが可能で、かつ、幅広い業界・職種へ「転出」することが可能な職業のことです。

世界中のフライトの発着拠点となるハブ空港になぞらえて、私たちは「ハブ・キャリア」と呼んでいます。

ハブ・キャリアの代表例は、戦略コンサルタントです。具体的には、マッキンゼーやボストンコンサルティンググループをはじめとする戦略系ファーム、アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティングなどの総合系ファーム、野村総合研究所や三菱総合研究所などの大手シンクタンクの戦略コンサル経験者などが該当します。

もちろん、戦略コンサルティング業界には、新卒でも入社可能ですが、中途入社が大きな割合を占めています。

その中途採用方法が、とてもユニークです。コンサル未経験でも入社可能で、MBA(経営学修士)も必要ありません。経営企画やマーケティングなどの実務経験も問われないのです。

そのため、営業、人事、システムエンジニア、研究職、国家公務員など、非常に幅広いバックグランドの方が応募可能で、ポテンシャルが高ければ採用されます。

そして、注目すべきは、戦略コンサルタントとしてのキャリアを経ると、次の転職でも幅広い選択肢が生まれるという特徴です。

戦略コンサルタントは、さまざまなプロジェクトを通じて経営課題を解決する高い専門能力を習得します。

そのため、戦略系ファーム、総合系ファーム、大手シンクタンクの戦略コンサル経験者は、幅広い業界の大手事業会社、ベンチャー企業やNPOにおいて、経営幹部、経営企画、新規事業開発、マーケティング、M&A、組織開発、業務改革など、さまざまなマネジメントポジションで重宝されます。

また、投資銀行やPEファンドなど、他プロフェッショナルファームに転身する機会があります。

もちろん、戦略コンサルを経験しても、経理や法務、システムエンジニアなどの専門職への転身は難しいですが、経営幹部としてのキャリアを目指す方にとっては、たいへん役立つキャリアであると言えるでしょう。

次世代の「ハブ・キャリア」として注目されるデジタル系企業の企画職

ハブ・キャリアは、戦略コンサルタント以外にも、さまざまな種類があります。

時代によっても変化しますが、次代のハブ・キャリアとして注目を集めているのが、デジタル系企業の企画職です。

具体的には、GoogleやAmazonなどの外資デジタル系企業、楽天やエムスリーなどの国内デジタル系企業、さらには、AIやIoTをはじめとする先端的なデジタル系スタートアップなどが挙げられます。

デジタル系企業の経営企画、マーケティング、事業開発等のポジションでは、他業界の経営企画経験者を積極的に採用するだけでなく、優秀な若手層についてはポテンシャル採用を積極的に行っている企業も数多くあります。

定量分析をベースとした問題解決や意思決定が重要な業界であるため、論理的思考能力の高い人材であれば、未経験でもキャッチアップしやすいのです。

優秀な人材を幅広く受け入れているデジタル系企業のネクストキャリアにも、幅広い選択肢があります。

現代では、あらゆる業界の企業が、デジタルを活用した既存事業の改革に力を入れており、新規事業としてデジタルビジネスに着目しています。

そのため、デジタル系企業で企画や事業推進に関する経験を持つ人材は、さまざまな業界で引く手あまたとなっているのです。

消費財やアパレル、医療、総合商社など、もともと関心を持っていた業界へ転身したり、コンサルティングファームやベンチャーキャピタルなどのプロフェッショナルファームへ抜擢されたりすることも多々あります。

今後は、ますますデジタル経営人材への需要が高くなっていくことでしょう。

「ハブ・キャリア」はキャリア戦略の“マジック”

ハブ・キャリアを上手にキャリア戦略の中に組み込むと、無理なく大きなキャリアチェンジを行なうことができます。

例えば、「保険会社のシステムエンジニア」→「戦略コンサルタント」→「消費財メーカーの経営企画幹部」といった転身も可能です。

ハブ・キャリアを挟むことで、見事に業界も職種も入れ替わっています。しかも、この転身を通じて、新しい業務を学びながら、年収も上がり続けていきます。

まるで〝マジック〟でも見ているかのようです。

このような手法を理解しているか否かで、キャリア戦略の幅が大きく変わり、人生の可能性が大きく変わります。

多くの東大卒業生がコンサルティング業界に入るのは、「目先の年収UPを目指す」というような短絡的な理由だけではありません。

過去のバックグラウンドの縛りを受けずに、経営幹部ポジションをはじめとして、自身の望むゴールへ至ることができる貴重なキャリアだからなのです。

実際に、私たちが支援する数多くのコンサルティングファームの出身者が、ネクストキャリアにおいて、希望する業界の経営幹部や社長として活躍しています。

「ハブ・キャリア」である就活を大切にしよう

ここまで、ハブ・キャリアの価値や具体的な事例について解説してきました。

転職の話が多く出てきたので、「少し先の話かな?」と思った読者の方も多いかもしれませんが、そうではありません。

東大生の皆さんだからこそ、知っておいて頂きたいことがあるのです。

皆さんは就職活動を行う際、経験職種や経験業界による“色”が着いていません。そして、さまざまな業界の企業がポテンシャルを評価して採用をしてくれるので、非常に幅広い選択肢を持つことになります。

それは、社会人の第一歩となる就職活動は、まさに「ハブ・キャリア」そのものであるということです。

冒頭にお話したとおり、一度、社会人としての経験を積み始めると、ネクストキャリアに影響が出てきます。

だからこそ、社会人の第一歩となる就職活動は、とても重要なのです。

東大生の皆さんには、新卒での就職活動の価値に気づいて頂きたいと思います。早い段階から自分のキャリアと真剣に向き合い、適切な第一歩を踏み出して、望む人生を切り拓いて頂くことを切に願っています。